「むむ。戸を叩け」と、半七は指図した。 「ごめんなさい。今晩は……」 善八が戸をたたくと、友蔵は茶碗を下に置いて、表を睨みながら答えた。 「だれだ。今ごろ来たのは……」 「おれだよ。このあいだの鵜を買いに来たのだ」と、半七は云った。 「なに、鵜を買いに来た……」 「あの鵜を百両に買いに来たのだ」 「冗談云うな」 とは云いながら、幾分の不安を感じたらしく、友蔵は身がまえしながら雨戸をあけに出た。その雨戸は内そとから同時にがらりと明けられて、善八はすぐに飛び込んだが、相手も用心していたので、もろくは押さえられなかった。殊にしん吉とは違って、頑丈の大男である。二人は入口の土間を転げまわって揉み合ううちに、友蔵は善八を突きのけて表へ跳り出ようとする、その横っ面に半七の強い張り手を喰らわされて、思わずあっ[#「あっ」に傍点]と立ちすくむところを、再び胸を強く突かれて、彼はあと戻りして土間に倒れた。善八は折り重なって縄をかけた。 「なんでおれを縛りゃあがるのだ」と、友蔵は吽《ほ》えるように呶鳴った。 「ええ、静かにしろ。おれは江戸から御用で来たのだ」と、半七は云った。 眼のさきに十手を突き付けられて、友蔵もさすがに鎮まった。 自動車保険 男心と秋の空
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